データが語る
「障がい」の構造的変容
かつての「身体障がい」中心の時代から、精神・発達障がいを中心とした「見えない障がい」の時代へ。 急増する障がい者数の実態と対応する社会の現状を、最新の統計データから読み解く。
人口動態の地殻変動
障がい者人口の内訳は劇的に変化しました。身体障がい者が高齢化する一方で、精神障がい者の数が急増し、全体の過半数を占めるに至っています。これは診断基準の変化や社会的認知の広まりを反映しています。
障がい種別構成 (2025推計)
年齢階級別の偏り
急増する「精神障がい」614.8万人の内訳(令和2年 患者調査ベース)
統計上の「精神障がい」は非常に広範なカテゴリーです。最大勢力はうつ病・躁うつ病などの「気分障がい」で、全体の約3割を占めます。
次いで、社会不安やストレスによる神経症性障がいが多く、高齢化に伴い認知症も大きな割合を占めます。
従来、精神医療の中心であった統合失調症は約1割未満ですが、入院患者数では依然として最多です。また、近年注目される発達障がいは「その他」に含まれることが多く、実態以上の増加傾向にあります。
※発達障がいの主な例:
自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障がい(LD)など
※厚生労働省「令和2年 患者調査」より作成
教育現場の「X」カーブ
少子化で全児童生徒数が減少する中、支援を必要とする子供の数は爆発的に増加しています。特に通常の学級に在籍しながら支援を受ける「通級」の伸びが著しく、インクルーシブ教育の過渡期における現場のニーズを如実に表しています。(インクルーシブとは、障がいの有無にかかわらず、誰もが排除されず同じ場で共に学ぶ教育のこと)
児童生徒数の推移:逆相関の衝撃
2010年を基準(100)とした指数推移※全児童生徒数は減少トレンド(点線)、特別支援教育対象者は急上昇(赤・緑線の合計)を描いている。
公的教育コストの非対称性
教室内の多様化
2023年時点で、公立小中学校の通常学級に在籍する児童生徒の約19.8万人が「通級による指導」を受けています。これは2009年比で約3.7倍であり、クラスに数人は何らかの配慮を必要とする状況が「日常」となっています。
↗ 急激な増加トレンド
経済的自立の壁
法定雇用率の引き上げにより雇用者数は過去最高を更新していますが、「賃金」と「生活コスト」の間には深い溝があります。特に福祉的就労(B型)のみでは経済的自立は不可能であり、年金との併給でも貧困リスクが残ります。
就労形態別 月額平均賃金
生活収支シミュレーション
B型事業所就労・障がい年金2級受給・グループホーム居住の単身者モデル
移動の自由:地域格差
ユニバーサルデザイン(UD)タクシーの導入率は、地域によって10倍以上の開きがあります。都市部や特定の先進県(鳥取)では移動が容易になりつつある一方、地方部では依然として物理的な移動の障壁が高いままです。